売れる歌詞の作り方と桜井和寿さんの作詞方法

【曲は書けるけど歌詞は苦手】【良い歌詞を意識するほどペンが進まない!】【ぐっとくるワードがなかなか出てこない】など作詞の悩みを持っている人は多いと思います。

いまそんな悩みをを持っている方はきっと【型にはめすぎ】だと思います。採用されるためにはもっと別の視点が必要です。作詞は自由でよいのです。

私自身は作詞家ではないですが、音楽プロデューサーとして
日々様々なアーティストの歌詞の添削や採用を判断しています。

いわゆる歌詞を採用する側の経験を生かして

本日のテーマは

どのような歌詞を良い歌詞と判断するのか

どんな歌詞が採用されやすいのか?

型にはめない歌詞の作り方:ミスチル桜井和寿さんのユニークな作詞方法

を解説いたします。

後半ではミスチル桜井さんがB’zの稲葉さんとの対談の中でお話しされていた独自の作詞方法もご紹介いたします。

作詞に悩んでいる方に向けて

採用されるための歌詞の作り方

をご説明できればと思います

すこし長めの記事になりますが【作詞家を目指す人】だけではなく、【自分の楽曲の作詞をしている人】にも役立つ話なので、ぜひ最後までお付き合いください!


筆者自己紹介

プロデューサー/ディレクターとして20年。プロの現場でメジャーアーティストと一緒に音楽を作って来ました。現在はメジャーレコード会社で制作の最高責任者をしています

ズバリ!採用されやすい歌詞とは?

ズバリ!採用されやすい歌詞とは
このような歌詞です

  • アーティストのキャラクターにあっている歌詞
  • 1回読むだけで覚えられるキラーワードが入っている
  • 型にこだわっていない歌詞

この3つを満たすだけで正直OKです

【美しい言葉を使わなければ】【起承転結をつけなければ】などという型は捨ててしまいましょう!

アーティストのキャラクターにあっている歌詞

まず始めに、採用されやすい歌詞は【歌うアーティストのキャラ】にあっていなければ採用されません

意外とシンプルで当たり前ですが多くの人が見落としがちな部分です

アーティストのキャラにあった歌詞とは?

【誰かに歌詞を提供する場合】必ず最初に、リスナーはだれか?という部分を考えてください。リスナーを理解することがアーティストのキャラを見極める第一歩です。

ここで問題!

どんなリスナーを想像しますか?

①男性ボーカル:イケメン:高身長:俳優:クール:たまに見せる優しい笑顔が魅力

A.リスナーは10代~20代の女性:イケメン好き:ギャップ好き

②女性ボーカル:特別美人ではない:友達のような存在:女性の代弁者

A.リスナーは20代女性:仕事に忙しい:人生に少し悩んでいる:結婚願望がある

このようにリスナーをまず想像してください
そうすれば、自ずと使うべき言葉や口調を大まかに捉えることができます


捉え方はあなたの自由でよいです。それこそが【あなたのオリジナリティ】です。

①のイケメン歌手に【てめぇらすべてぶっこせ!】的な歌詞は似合わず
②の女性ボーカルに【お金稼いで成り上がろうぜ】的な歌詞は似合わないのです。

あえて、そこを外してオリジナリティを出す!という人もいるかもしれませんが…

作詞コンペにおいては全くの無意味です。なぜなら、何千という歌詞の中から選ぶ側としては細かい部分まで気が回りません。キャラクターから外れている時点で除外です。

オリジナリティが光るのは残り10作品くらいまで残ってからです。まずはニーズをとらえましょう

②一度読むだけで覚えられるキラーワードが入っている

次はキラーワードです

キラーワードの定義

頭に残るワード

引っかけるワード

違和感を感じるワード

この3つがキラーワードです

頭に残るワード

【頭に残るワード】は歌詞にインパクトを生み出します

【頭に残るワード】とはこのようなワードです。例として【DISH//さんの猫】を使います。頭に残るワードはこちら

【猫】【猫になったんだよな君は】

この二つだと私は思います。

別にBGM的にながしていても、【猫】というワードと【猫になったんだよな君は】という歌詞は強烈に頭に残ります。名曲というのはファンでない人からも【あーあの猫の歌ね】的に認識されることが重要です

それだけ世間に広まったという証拠になるからです。

Adoさんの【うっせぇわ】なんかもまさにそうですよね!

引っかけワード

【引っかけワード】は歌詞に共感を生み出します

続いては【引っかけワード】

何を引っかけるのか?それはリスナーの心情を引っかけるのです。専門用語ではHOOK(フック)なんていうこともあります。

【あーなんかそんな経験あるな】という共感を生み出すワードが【引っかけワード】です

YOASOBIさんの【夜に駆ける】を例に見てみましょう。次の二つはAメロの同じメロディーのところで使われている歌詞です

※「さよなら」だけだった その一言ですべてが分かった

※初めて会った日から 僕の心のすべてを奪った

【あーなんかそんな経験あるな】 と思いませんか?恋人との別れというのが一般的なとらえ方ですが、この【引っかけワード】のすごさは友人との別れや卒業というテーマににも当てはまるところです。

ラブソングなので楽曲的にはもちろん恋人に向けた言葉だと思うのですが

このように、別の経験に置き換えられる言葉選びというのはターゲットの拡大を狙えます

ZARDさんの【負けないで】は遠距離になってしまった恋人を思う失恋ソングですが【引っかけるワード】によってマラソンなどでつかわれる日本を代表する応援歌に変化しました。

違和感を感じるワード

違和感を感じるワードは歌詞に中毒性(クセ)を与えます

3つめのキラーワードは【違和感を感じるワード】です

井上陽水さんの【少年時代】を例にあげます。

※夏が過ぎ 風あざみ

※夏祭り 宵かがり

※8月は 夢花火

この【風あざみ】【宵かがり】【夢花火】という3つの言葉すべて造語だそうです。

風あざみ:風に揺れるアザミの花

宵かがり:宵のかがり火

夢花火:夢で見たような/夢のようにはかない花火

という意味で使っていると本人が話されています。ここまで天才的な言葉選びをする必要はないのですが、このようなあまり普段使わない言葉を使用することで曲に中毒性が生まれます。

Foorinさんの【パプリカ】なんかもそうですよね

パプリカ 花が咲いたら

パプリカの花?食べるもんじゃないの?どんな花?

なんていう違和感があります。このように視点を少しずらして違和感のある言葉を使うと、人はそれに無意識に反応してしまいます。それが曲の中毒性を生み出します

③型にこだわっていない歌詞

さて、採用されやすい歌詞の3つ目は型にはまっていない歌詞です

これは私の経験上最近強く思う部分です

最近様々な、教本やネットの情報などが増えてきたため歌詞をある一定の型に当てはめて作っている人が多い印象があります。

代表的な型
  • 歌詞に起承転結をもたせよう
  • 登場人物の心情を描写しよう
  • シチュエーションを明確にしよう
  • オチをしっかりつけよう

こんな感じのやつです

確かにこのような歌詞が流行った時代がありました。そして、このような事を守るとすごく整った歌詞が作れると思います。

ただ私が思うのは、【今の時代にそんな整った歌詞が必要か?】ということです。以前より1個人が聴ける楽曲の量は増えています。音楽がサブスク化(聴き放題)になったからです。数百万という楽曲の中でオリジナリティをだすためにはもうあまり型にこだわらなくてもよいと思います。

無視して書いたほうがよいというのではなく、結果型に当てはまる部分があればよい

くらいに思ってほしいです。

なぜかというと、何千曲というデモの歌詞をみていると同じようなものだらけなのです。

作詞コンペでは目立つという部分もすごく重要です。【あーこのパターンの歌詞ね】と思われたら採用の可能性は落ちます

アーティストのキャラにあわせて、キラーワードを使いながら、自由な発想であなたにしかできない歌詞を作れることが一番良いのです。

これからの時代、作詞もブランディング化させることが重要です

【OOさんの歌詞は表現が独特】【OOさんの歌詞は狂気的】などという、個性を出していかないと他の歌詞を出し抜いてはいけないと思います。

歌詞の作り方:ミスチル桜井和寿さんのユニークな作詞方法

さて最後は具体例としてミスチル桜井さんの作詞方法をご紹介したいとおもいます。これがすべてではないと、お話しされていましたが多くの歌詞はこの手法を用いているそうです。

【採用されるための歌詞】で説明した要素とも共通する部分があり面白いと私は感じました

STEP1:でたらめな英語で仮歌詞をつくる

まず、桜井さんはメロディーに対して、でたらめな英語歌詞をつけるそうです。理由は

日本語特有のカクカクした音だと滑らかにメロディーに歌詞がのらないから

というのが理由だそうです。これに関しては音楽制作の現場では一般的な手法です。特に作曲のコンペでは【仮英語詞で提出してください】ということがほとんどです。

ここからが桜井さんの作詞手法のすごいところ

STEP2:でたらめ英語歌詞を聴きこんで【聴き間違い】を誘発する

これは面白い!まるで空耳アワー

でたらめ英語を聴いてわざと聴き間違いを誘発するのだそうです。例えば

【I see tell just night】 というでたらめな英語に対して【あいしてるじゃないと】

というふうに、わざと聴き間違いを探すそうです。こうすることによって英語特有のノリの良さをそのまま日本語でも生かすことができるそうです。

この時点で、すでに【型にこだわらずに書く】という作詞法ですよね

STEP3:聴き間違えて出てきた単語をつなぎ合わせるストーリーを考える

動画では、【スニーカー】と【ペットボトル】という2つのワードで説明されてたのですが

この聴き間違えた【スニーカー】と【ペットボトル】という【違和感を感じるワード】をつなぐためにストーリーを考えるそうです。

まるで点と点をつなぐように

この【違和感を感じるワード】の関係性が遠ければ遠いほど、つなげるためのストーリー(道のり)が深く壮大になっていくそうです

つなげていく過程で【頭に残るワード】や【引っかけるワード】を使っていくのでしょうね

このような独特な手法が唯一無二の歌詞を作詞するミスチル桜井さんの凄さなのかもしれませんね

まとめ:採用されるには既存のアイデアをぶち壊すこと

いかがだったでしょうか、まとめです。

💡採用されやすい歌詞とは
  • 歌う人のキャラクターの世界観にあっている
  • 3種類のキラーワードを駆使する
  • 既存の型にこだわらない

この3つが重要です。

そしてミスチル桜井さんのように独自の作詞方法を試行錯誤して

自由に発想する

ことが大事だと思います。【教本】や【歌詞の型】にこだわりすぎてしまうと必ずどこかで壁にぶち当たってしまいます。そんな時にこの記事の内容がお役に立てればすごくうれしいです。

ぜひ皆さんも自分の好きな歌詞をみて、これらの手法がどのように使われているか確認していただけると新しいアイデアが生まれると思います

お読みいただきありがとうございました!